東京高等裁判所 平成11年(行ケ)356号 判決 2000年7月31日
東京都新宿区西新宿2丁目4番1号
原告
セイコーエプソン株式会社
代表者代表取締役
安川英昭
訴訟代理人弁理士
阿部龍吉
同
蛭川昌信
同
白井博樹
同
内田亘彦
同
菅井英雄
同
青木健二
同
韮澤弘
同
米澤明
東京都千代田区霞が関3丁目4番3号
被告
特許庁長官 及川耕造
指定代理人
水垣親房
同
山口由木
同
大橋良三
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
特許庁が平成10年審判第18687号事件について平成11年9月8日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
2 被告
主文と同旨
第2 当事者間に争いのない事実
1 特許庁における手続の経緯
原告は、平成2年9月10日、発明の名称を「現像方法」とする発明について特許出願をしたが、平成10年10月27日に拒絶査定を受けたので、平成10年11月26日、拒絶査定不服の審判の請求をした。特許庁は、これを平成10年審判第18687号事件として審理した結果、平成11年9月8日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、平成11年10月9日にその謄本を原告に送達した。
2 特許請求の範囲(請求項3)
「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、前記トナーを球形状とし、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより急速に摩擦帯電させることを特徴とする現像方法。」
(別紙図面(1)参照)
3 審決の理由
別紙審決書の理由の写しのとおりである。要するに、上記特許請求の範囲請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、実願昭56―83923号(実開昭57―197046号)の願書のマイクロフィルム(以下「引用刊行物」という。)に記載された技術(以下「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条2項に該当し、特許を受けることができない、とするものである。
第3 原告主張の審決取消事由の要点
審決の理由中、1(手続の経緯・本願発明の内容)は認める。2(引用例)のうち、「そして、図面第2図を参酌すると、現像ローラ1の表面は、帯電ブレード2の表面粗さよりも粗い微細な凹凸が与えられる構成として理解され、この構成は現像ローラ1と帯電ブレード2の表面粗さが異なっている事項を意味するものであ」るとする部分、引用発明が「所定の極性に帯電させた現像ローラ上のトナーを潜像保持ドラムに現像する現像方法において、前記現像ローラと表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記現像ローラ上に前記トナーを押圧して殆ど単一層のトナー層に仕上げ前記弾性ブレードと前記現像ローラとの間で前記トナーを転がし摩擦に依り帯電させる現像方法」であるとする部分を争い、その余を認める。3(対比・判断)のうち、相違点1(本願発明は、トナーの形状に関し「トナーを球形状とし」を構成としているのに対し、引用発明には、このような構成が記載されていない、との点)及び同2(本願発明は、摩擦帯電に関し「急速に摩擦帯電させる」を構成としているのに対し、引用刊行物には、このような構成が記載されていない、との点)の認定及び同1についての判断を認め、その余を争う。4(結論)は争う。
審決は、引用発明の認定を誤り、その結果、本願発明と引用発明との一致点の認定を誤り(取消事由1)、それも原因となって相違点2についての判断も誤り(取消事由2)、本願発明に進歩性がないとの誤った判断に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。
1 取消事由1(引用発明の認定の誤りに基づく一致点の誤認)
(1) 審決は、上記のとおり、引用刊行物について、「図面第2図を参酌すると、現像ローラ1の表面は、帯電ブレード2の表面粗さよりも粗い微細な凹凸が与えられる構成として理解され、この構成は現像ローラ1と帯電ブレード2の表面粗さが異なっている事項を意味するものであ」る(審決書5頁18行~6頁2行)と認定し、同刊行物に、「所定の極性に帯電させた現像ローラ上のトナーを潜像保持ドラムに現像する現像方法において、前記現像ローラと表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記現像ローラ上に前記トナーを押圧して殆ど単一層のトナー層に仕上げ前記弾性ブレードと前記現像ローラとの間で前記トナーを転がし摩擦に依り帯電させる現像方法」の技術(引用発明。審決書6頁7行~13行)が記載されていると認定したが、これらの認定は誤りである。
引用刊行物には、ブレードに現像ローラと同様に凹凸を与えることも、ブレードを現像ローラと異なる表面粗さとすることも、弾性ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させることも記載されておらず、これらを示唆するものも見当たらない。同刊行物には、現像ローラの表面に凹凸を与えること、凹凸の大きさがトナー層厚を決めること、凹凸の大きさはトナーの平均粒径の1倍から3倍くらいで選ばれること、ブレードの先端に達するまでの間に転がりや摩擦による帯電が与えられることが記載されているにすぎない。(別紙図面(2)参照)
(2) 上記「前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレード」の構成に関して、引用刊行物に、現像ローラ1の表面には、例えば平均的な深さが20μ程度の微細な凹凸が与えられる旨の記載、実施例1の現像ローラ表面の凹凸の平均深さが15μm、トナーの平均粒径が12μmである旨の記載があることは、被告のいうとおりである。
しかし、このように、現像ローラの平均的な深さが20μm~15μm、トナーの平均粒径が12μmである場合、帯電ブレードによって現像ローラ上にトナーを押圧してほとんど単一層のトナー層に仕上げるとすると、トナーは、現像ローラの凹部の中に嵌入してしまい、そのため、帯電ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させる状態とならない。したがって、引用発明について、本願発明のように、弾性ブレードとトナー担持体との間でトナーを転がり摩擦により帯電させるものとして把握することはできない。
(3) 審決は、本願発明が「トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させる」との構成を具備しているのに対し、引用発明はこれを具備していないにもかかわらず、上記のとおり引用発明の認定を誤ったため、上記構成を具備していることを両発明の一致点と誤認した。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)
審決は、上記誤りも与(あずか)って、さらに、相違点2(本願発明は、摩擦帯電に関し「急速に摩擦帯電させる」を構成としているのに対し、引用刊行物には、このような構成が記載されていない、との点)について、引用発明に周知技術を適用すれば相違点2に係る本願発明の構成、すなわち、「急速に摩擦帯電させる」との構成に想到することに何らの困難性もない、とする誤った判断をした。
(1) 本願発明は、「トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させる」との構成を有しており、この構成によって、トナーを「急速に摩擦帯電させる」という効果を奏することができるものである。これをより具体的にいえば、トナー担持体に当接する弾性ブレードをトナー担持体と表面粗さが異なる構成とすることによって、弾性ブレードは、トナー担持体に当接する表面で行程差を有することになり、トナーを薄層化し、トナー層が1層になって、弾性ブレードとトナー担持体との問で擦りながら転がり、その結果としてトナーを「急速に摩擦帯電させる」ことができるものである。
(2) 一方、引用発明は、本願発明のような構成とされておらず、したがって、弾性ブレードが、トナー担持体に当接する部分でトナーの転動を促進するような構成となっていない。
また、引用発明は、現像ローラの表面にトナーの粒径より大きい深さの凹凸を与えるものであるから、トナーが現像ローラの窪みに埋まってしまい、弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることができず、トナー層を1層に薄層化することができないのである。
(3) 本願発明は、相違点2に係る構成を採用することによって、トナーと弾性ブレードあるいはトナーとトナー担持体との間で接触することにより、トナーが帯電する機会を増やし、トナーに所望の帯電量を帯電させ、安定に高濃度の画像を形成することができるという顕著な作用効果を奏するものであり、審決は、このような本願発明の顕著な作用効果を看過しているものである。
第4 被告の反論の要点
審決の認定判断は、正当であり、審決を取り消すべき理由はない。
1 原告は、引用刊行物には、ブレードに現像ローラと同様に凹凸を与えることも、ブレードを現像ローラと異なる表面粗さとすることも、弾性ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させることも記載されておらず、これらを示唆するものも見当たらないと主張するが、失当である。
まず、現像ローラにトナーを塗布する帯電ブレードに関し、トナー層を均一に形成する観点から、トナーを押圧する表面を平滑とすることは、周知の一般的な技術である(例えば特開昭63―279283号公報(乙第1号証)、特開昭63―85654号公報(乙第2号証)参照)。
一方、引用刊行物(甲第6号証)には、現像ローラ1の表面には、例えば平均的な深さが20μm程度の微細な凹凸が与えられる旨の記載(5頁4行~6行参照)、実施例1の現像ローラ表面の凹凸の平均深さが15μm、トナーの平均粒径が12μmである旨の記載(12頁2行~14行参照)があることからすると、引用発明の現像ローラ1の表面は、帯電ブレード2の平滑な表面粗さよりも粗い15~20μmの微細な凹凸が与えられる構成のものとして理解される。
また、引用刊行物には、「比較的高い流動性を与えられているトナーは、帯電ブレード2の先端に達する迄の間に転がりや摩擦に依る帯電を与えられ、現像ローラ1との間に静電的引き合いを生ずる。」(4頁11行~15行)、「現像ローラ1の表面に与えられた凹凸1’は此の様にしてトナー層厚を確実に規定して、殆ど単一層のトナー層に仕上げるので、現像ローラ1の表面に存在しているトナーは総て確実に充分な帯電が行われている。」(5頁11行~15行)、「トナー層厚は基本的に凹凸に依り決まるものであるので、プレードはゴムの様なものが最も使い易いが、ローラや、フェルト、金属ブレード、等でも目的は達する。要は現像ローラの表面で個々のトナーが充分に転る状態が現出され、均一な帯電が実現されれば良い。」(17頁2行~7行)との記載があり、これらの記載によれば、トナーは、帯電ブレード2の先端に達するまでの間に転がりや摩擦による帯電を与えられ、現像ローラ1の表面に与えられた微細な凹凸とブレード2の圧力によりほとんど単一層のトナー層に仕上げられて、現像ローラの表面で個々のトナーが十分に転がる状態となり、均一な帯電を実現することができると把握することができる。
2 引用刊行物には、上述のとおり、現像ローラと帯電ブレードによって現像ローラ上にトナーを押圧してほとんど単一層のトナー層に仕上げ、帯電ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させるという技術が記載されている。引用刊行物の上記実施例の記載は、現像ローラの表面に与えられた凹凸の平均的な深さが、トナーの平均粒径よりも大である事項を例示するだけである。しかも、現像ローラ表面の凹凸の形状は、凹凸の平均的な深さだけで定まるものではない。
3 原告は、引用刊行物を独自に理解して、引用発明を、本願発明のように、弾性ブレードとトナー担持体との間でトナーを転がり摩擦により帯電させるものとして把握することはできないと主張している。原告の主張は、引用刊行物の記載内容に基づかないものであって、前提に誤りがある。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(引用発明の認定の誤りに基づく一致点の誤認)について
(1) 引用刊行物の記載
引用刊行物(甲第6号証)に、
「本考案の最も原理的な実施態様を示せば図面第1図の通りであり、図中1はトナー保持部材(一般的には現像ローラと呼称されるから、以後この呼称を使う)を、1’は現像ローラの表面にある微細な凹凸を、2は帯電ブレードを、3はクリーニングブレードを、4はトナーを供給するスポンジローラを、5はトナー溜めを、6は潜像保持ドラムを、7は交流バイアス電源を、8は直流バイアス電源を示している。」(3頁12行~4頁4行)
「次に此の実施態様の作用を概略的に説明すると、トナー溜め5からスポンジローラ4により小量づつ供給されるトナーは、軽く現像ローラ1に押し当てられる帯電ブレード2に依り量的制限を受けて、均一に現像ローラ1の表面に供給される。此の部分におけるトナーの供給状態を拡大して概念的に画いたものが図面第2図である。比較的高い流動性を与えられているトナーは、帯電ブレード2の先端に達する迄の間に転がりや摩擦に依る帯電を与えられ、現像ローラ1との間に静電的引き合いを生ずる。此の間ブレード2とトナーの間に於ける帯電も寄与するが、これは必ずしも大きくはない。帯電ブレード2として使用するには、或る程度の弾性が必要となるので、例えば、ウレタンゴムやシリコンゴムが好んで使われる。現像ローラ1の表面には、例えば平均的な深さが20μ程度の微細な凹凸を与えてあるから、ブレード2の圧力が或る程度あれば、トナー層は常時同じ層厚になる。安定的に同一層厚を得るためには、帯電ブレード2のエッジを使用するのではなく、腹を当てて現像ローラ1の表面に触れる部分の面積を得る方が良い。現像ローラ1の表面に与えられた凹凸1’は此の様にしてトナー層厚を確実に規定して、殆ど単一層のトナー層に仕上げるので、現像ローラ1の表面に存在しているトナーは総て確実に充分な帯電が行われている。」(4頁4行~5頁15行)
「前述の様な過程で現像ローラ1の表面に供給されたトナーは、現像部位で第1図中7及び8で示す電源に依る電気的な補助を受けて、潜像の可視化部に対して飛翔する。通常のコピーマシンに於ける様に、例えばプラスの潜像をマイナスに帯電したトナーで現像する様に潜像と帯電電極の極性が互に反対の場合には、8の電源による直流バイアスは不要である。」(6頁6行~13行)
「トナー層厚は基本的に凹凸に依り決まるものであるので、ブレードはゴムの様なものが最も使い易いが、ローラや、フエルト、金属ブレード、等でも目的は達する。要は現像ローラの表面で個々のトナーが充分に転る状態が現出され、均一な帯電が実現されれば良い。」(17頁2行~7行)
との記載があることは、当事者間に争いがない。そして、第1図ないし第3図には、上記記載に沿った図面が示されていることが認められる(別紙図面(2)参照)。
また、本願発明と引用発明との対応関係について、引用発明の現像ローラ、潜像保持ドラムが、それぞれ本願発明のトナー担持体、潜像担持体に相当し、引用発明の、ほとんど単一層のトナー層に仕上げる旨の事項が、本願発明の、トナーを薄層化する旨の事項に相当することも、当事者間に争いがない(審決書6頁16行~7頁3行参照)。
上記記載、特に「本考案の最も原理的な実施態様を示せば図面第1図の通りであり・・・1はトナー保持部材(一般的には現像ローラと呼称されるから、以後この呼称を使う)を・・・2は帯電ブレードを・・・6は潜像保持ドラムを・・・を示している。」、「小量づつ供給されるトナーは、軽く現像ローラ1に押し当てられる帯電ブレード2に依り量的制限を受けて、均一に現像ローラ1の表面に供給される。」、「トナーは、帯電ブレード2の先端に達する迄の間に転がりや摩擦に依る帯電を与えられ、現像ローラ1との間に静電的引き合いを生ずる。」、「要は現像ローラの表面で個々のトナーが充分に転る状態が現出され、均一な帯電が実現されれば良い。」との記載に、第1図ないし第3図(別紙図面(2)参照)並びに上記争いのない本願発明と引用発明との対応関係を併せ考えれば、審決の認定したとおり、引用発明が、「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより摩擦帯電させる現像方法」という構成を有していることを優に認めることができる。
(2) 原告は、引用刊行物には、ブレードに現像ローラと同様に凹凸を与えることも、ブレードを現像ローラと異なる表面粗さとすることも、弾性ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させることも記載されておらず、これらを示唆するものも見当たらない旨主張するが、失当である。
引用刊行物の上記記載、特に、「トナー層厚は基本的に凹凸に依り決まるものであるので、ブレードはゴムの様なものが最も使い易いが、ローラや、フェルト、金属ブレード、等でも目的は達する。要は現像ローラの表面で個々のトナーが充分に転る状態が現出され、均一な帯電が実現されれば良い。」との記載によれば、トナー層厚は、基本的に現像ローラの凹凸によって決まるものであり、引用発明のブレードとしては、現像ローラの表面で個々のトナーを十分に転がすことができる状態になっていればよい、とされていることが明らかである。
引用刊行物の第2図をみると、同図には、現像ローラ1の表面には凹凸が形成されており、ブレード2の表面は平坦になっていることが図示されていることが認められる。
乙第1号証によれば、特開昭63―279283号公報には、現像剤、弾性ブレード、現像材担持体現像ローラ、静電像保持体を構成要素とする、本願発明と同一の技術分野に属する現像方法の技術が開示されており、「弾性ブレード26の表面粗さが1μm以上では現像ローラ24上へのトナー層形成が均一に行われ難くなる。」(3頁左下欄12行~14行)との記載があることが認められる。上記記載においては、弾性ブレードの表面粗さは、0.001mm(1μm)未満でなければならないと、いいかえれば、極めて微細な表面粗さしか許されないとされているのであるから、ここでは、弾性ブレードの表面は、均一なトナー層を形成するうえで、ほぼ平坦なものでなければならないものとされていることになる。
以上によれば、引用発明には、現像ローラと表面粗さが異なる帯電ブレードによって現像ローラ上にトナーを押圧し、現像ローラの表面で個々のトナーを十分に転がし、トナーの均一な帯電を実現する技術が開示されていることが明らかである。引用発明に、ブレードを現像ローラと異なる表面粗さとすることも、弾性ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させることも記載されていない、とすることができないことは、明白である。
なお、原告は、引用刊行物には、ブレードに現像ローラと同様に凹凸を与えることが記載されていないというけれども、本願発明に係る特許請求の範囲には、「前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレード」と記載されているだけであり、ブレードに現像ローラと同様に凹凸を与えることは本願発明の構成要件とされていないから、原告の主張は、この点で既に失当である。
(3) 原告は、引用刊行物に、現像ローラ1の表面には、例えば平均的な深さが20μm程度の微細な凹凸が与えられる旨の記載、実施例1の現像ローラ表面の凹凸の平均深さが15μm、トナーの平均粒径が12μmである旨の記載があることに着目して、現像ローラの平均的な深さが20μm~15μm、トナーの平均粒径が12μmである場合、帯電ブレードによって現像ローラ上にトナーを押圧してほとんど単一層のトナー層に仕上げるとすると、トナーは、現像ローラの凹部の中に嵌入してしまい、そのため、帯電ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させる状態とならない旨主張する。
しかしながら、引用刊行物には、前記認定のとおり、帯電ブレードと現像ローラとの間でトナーを転がり摩擦により帯電させるという技術が記載されているのであり、現像ローラの平均的な深さが20μm程度の場合(ここでは、トナーの平均粒径は挙げられていない。)、トナーの平均粒径が10μm程度の場合(ここでは、現像ローラの平均的な深さは挙げられていない。)、現像ローラの平均的な深さが15μmで、トナーの平均粒径が12μmである場合(実施例1の場合)は、その例として示されているにすぎない。しかも、上記実施例における上記各数値は、無数にある凹凸の深さ及びトナーの粒径の平均値をいっているにすぎないのであり、また、上記実施例においては、現像ローラの平均的な深さが15μmであるというだけであって、その窪みの形状については何らの記載もないのであるから、直ちに、平均粒径12μmのトナーが上記窪みに嵌入してしまい、以後、転がることができない状態になるとはいえないのである。
原告の主張は、現像ローラの全表面において15μmの均一な凹凸があり、トナーのすべてが12μmの均一な粒径を有し、しかも、ほとんどすべてのトナーが現像ローラの凹部に嵌入して、以後、転がることができない状態になるという特異な状態を想定した独自の主張というべきであって、失当である。
(4) 以上のとおりであるから、審決が、本願発明と引用発明とを対比して、両発明が「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより摩擦帯電させる現像方法」との構成を有する点で一致する、と認定したことに誤りがないことは、明らかである。
2 取消事由2(相違点2についての判断の誤り)について
原告は、相違点2(本願発明は、摩擦帯電に関し「急速に摩擦帯電させる」を構成としているのに対し、引用刊行物には、このような構成が記載されていない、との点)について、本願発明においては、トナー担持体に当接する弾性ブレードをトナー担持体と表面粗さが異なる構成とすることによって、弾性ブレードは、トナー担持体に当接する表面で行程差を有することになり、トナーを薄層化し、トナー層が1層になって、弾性ブレードとトナー担持体との間で擦りながら転がり、その結果としてトナーを急速に帯電させることができるものである旨主張する。
(1) しかしながら、前記のとおり、本願発明に係る特許請求の範囲には、「前記トナーを球形状とし、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより急速に摩擦帯電させる」と記載されているのであり、通常の用語法に従えば、本願発明にいう「急速に摩擦帯電させる」は、「前記トナーを球形状とし、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させる」という構成に基づく結果以上に出るものではないと理解するのが自然である。
そして、「前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させる」という構成が、本願発明と引用発明とで一致していることは、前記2認定のとおりである。また、相違点1に係るトナーの形状の特定については、引用刊行物に明記されていないというものの、引用発明のトナーの形状を「球形状」に特定することは、何らの困難性もないことであり、この点については、原告も争っていないところである。
そうすると、「急速に摩擦帯電させる」という構成は、引用発明においても、トナーの形状を「球形状」に特定しさえすれば当然に導き出される結果であるということができ、相違点2を論ずるまでもないことになる。
(2) しかし、本願明細書の発明の詳細な説明において、本願発明にいう「急速に摩擦帯電させる」に格別な技術的意味を付与している可能性があり得るので、念のため、発明の詳細な説明について検討してみる。
甲第2号証によれば、発明の詳細な説明の欄の[作用]の項の記載は、「本発明の上記の構成によれば、球状のトナーを用いることにより、トナー担持体を潜像担持体に安定に圧接し、かつ、摩耗のない状態で現像することができ、弾性ブレードによりトナー担持体上のトナー層を薄層化して、現像電極を潜像担持体に最近接させ高解像の画像を形成することができる。しかも、トナーをトナー担持体上で転動させて急速に所望の帯電量に帯電させることができ、現像トナー量の変動を低減することができる。また、本発明の上記の構成によれば、弾性ブレードの表面粗さとトナー担持体の表面粗さとが異なる構成とすることにより、弾性ブレードがトナー担持体に当接する部分でトナーの転動を促進し、トナーと弾性ブレードまたはトナーとトナー担持体との間の接触帯電機会を増加して、トナーを安定に所望の帯電量に帯電させ、安定に高濃度の画像を形成することができる。さらに、本発明の上記の構成によれば、磁性のトナーを用い、かつ、トナー担持体が磁界発生層を有する構成とすることにより、トナー担持体へトナーを磁気力により拘束し、潜像担持体上での地カブリ(非画像部へのトナー付着)を低減し不要廃棄トナーを低減することができ、コントラストが高く高解像度の画像を形成することができる。」(4頁8行~5頁11行)というものであり、[発明の効果]の項の記載は、「以上述べたように本発明によれば、圧接現像に球状のトナーを用いることにより、安定なトナー帯電が可能で画像濃度変動が少なく、耐久性に優れた現像方法を提供することができる。また、弾性ブレードの表面粗さとトナー担持体の表面粗さとが異なる構成とすることにより、トナーの転動を促進し、トナーをより安定に所望の帯電量に帯電させ、かつ、急速に所定の帯電量に帯電させることができ、安定に高濃度の画像を形成することができる。さらに、磁性のトナーを用い、かつ、トナー担持体が磁界発生層を有する磁性の圧接現像とすることにより、潜像担持体上での地カブリを低減し不要廃棄トナーを低減することができ、コントラストが高く高解像度の画像を形成することができる。従って、本発明によれば、地カブリのような画像欠陥が少なく高解像で高濃度の画像が経済的に低ランニングコストで形成可能な現像方法を提供できるという優れた効果を有するものである。」(12頁末行~13頁19行)というものであることが認められる。
上記認定の[作用]及び[効果]の記載によれば、本願発明において、相違点2に係る「急速に摩擦帯電させる」が意味するところは、トナーを球形状とし、弾性ブレードの表面粗さとトナー担持体の表面粗さとが異なる構成を採用することにより、弾性ブレードがトナー担持体に当接する部分でトナーの転動を促進し、トナーと弾性ブレード又はトナーとトナー担持体との間の接触帯電の機会を増加して、トナーを安定に所望の帯電量に帯電させることができる、ということに尽き、それ以上には出ないことが明らかである。
そうすると、本願発明にいう「急速に摩擦帯電させる」との構成は、本願発明の「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、前記トナーを球形状とし、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させる」ことによって、転動を促進し、トナーと弾性ブレード又はトナーとトナー担持体との間の接触帯電機会を増加したことによる結果を示しているだけであるということができ、結局、本願発明にいう「急速に摩擦帯電させる」との語句は、格別な技術的意味を有するものとはいえないことになる。
(3) 上記の点につき、原告は、トナー層が1層であることを前提とした主張をしているが、失当である。
本願発明に係る特許請求の範囲には、「前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより急速に摩擦帯電させる」と記載されているのであるから、本願発明において、トナー層は、「薄層化」されるだけであって、更に「1層」となることまでも構成としているのでないことが、特許請求の範囲の記載自体から明らかである。原告の主張は、前提において誤っているものである。
(4) 原告は、本願発明は、相違点2に係る構成を採用することによって、トナーと弾性ブレードあるいはトナーとトナー担持体との間で接触することにより、トナーが帯電する機会を増やし、トナーに所望の帯電量を帯電させ、安定に高濃度の画像を形成することができるという顕著な作用効果を奏するものであり、審決は、このような本願発明の顕著な作用効果を看過している旨主張するが、この主張が採用できないものであることは、上述したところに照らし、明らかである。
(5) 以上検討したところによれば、相違点2は、引用発明において具備している構成であり、そもそも、本願発明と引用発明との相違点として判断するまでもなかったことになる。
3 以上のとおり、原告主張の審決取消事由はいずれも理由がなく、その他審決にはこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。
よって、本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山下和明 裁判官 設樂隆一 裁判官宍戸充は、差支えのため、署名押印することができない。裁判長裁判官 山下和明)
別紙図面(1)
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
第4図
<省略>
別紙図面(2)
第1図
<省略>
第2図
<省略>
第3図
<省略>
理由
1.[手続の経緯・本願発明の内容]
本願は、平成2年9月10日の出願であって、その請求項1~4に係る発明は、平成8年6月21日付け、平成10年7月29日付け、及び平成10年12月18日付けの手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1~4に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。
「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、
前記トナーを球形状とし、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより急速に摩擦帯電させることを特徴とする現像方法。」
2.[引用例]
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭56―83923号(実開昭57―197046号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、
「本考案の最も原理的な実施態様を示せば図面第1図の通りであり、図中1はトナー保持部材(一般的には現像ローラと呼称されるから、以後この呼称を使う)を、1’は現像ローラの表面にある微細な凹凸を、2は帯電ブレードを、3はクリーニングブレードを、4はトナーを供給するスポンジローラを、5はトナー溜めを、6は潜像保持ドラムを、7は交流バイアス電源を、8は直流バイアス電源を示している。」(明細書第3頁第12行~第4頁第4行参照)、
「次に此の実施態様の作用を概略的に説明すると、トナー溜め5からスポンジローラ4により少量づつ供給されるトナーは、軽く現像ローラ1に押し当てられる帯電ブレード2に依り量的制限を受けて、均一に現像ローラ1の表面に供給される。此の部分におけるトナーの供給状態を拡大して概念的に画いたものが図面第2図である。比較的高い流動性を与えられているトナーは、帯電ブレード2の先端に達する迄の間に転がりや摩擦に依る帯電を与えられ、現像ローラ1との間に静電的引き合いを生ずる。此の間ブレード2とトナーの間に於ける帯電も寄与するが、これは必ずしも大きくはない。帯電ブレード2として使用するには、或る程度の弾性が必要となるので、例えば、ウレタンゴムやシリコンゴムが好んで使われる。現像ローラ1の表面には、例えば平均的な深さが20μ程度の微細な凹凸を与えてあるから、ブレード2の圧力が或る程度あれば、トナー層は常時同じ層厚になる。安定的に同一層厚を得るためには、帯電ブレード2のエッジを使用するのではなく、腹を当てて現像ローラ1の表面に触れる部分の面積を得る方が良い。現像ローラ1の表面に与えられた凹凸1’は此の様にしてトナー層厚を確実に規定して、殆ど単一層のトナー層に仕上げるので、現像ローラ1の表面に存在しているトナーは総て確実に充分な帯電が行われている。」(明細書第4頁第4行~第5頁第15行参照)、
「前述の様な過程で現像ローラ1の表面に供給されたトナーは、現像部位で第1図中7及び8で示す電源に依る電気的な補助を受けて、潜像の可視化部に対して飛翔する。通常のコピーマシンに於ける様に、例えばプラスの潜像をマイナスに帯電したトナーで現像する様に潜像と帯電電極の極性が互に反対の場合には、8の電源による直流バイアスは不要である。」(明細書第6頁第6行~同頁第13行参照)、
「トナー層厚は基本的に凹凸に依り決まるものであるので、ブレードはゴムの様なものが最も使い易いが、ローラや、フエルト、金属ブレード、等でも目的は達する。要は現像ローラの表面で個々のトナーが充分に転る状態が現出され、均一な帯電が実現されれば良い。」(明細書第17頁第2行~同頁第7行参照)、
が図面共に記載されている。
そして、図面第2図を参酌すると、現像ローラ1の表面は、帯電ブレード2の表面粗さよりも粗い微細な凹凸が与えられる構成として理解され、この構成は現像ローラ1と帯電ブレード2の表面粗さが異なっている事項を意味するものであり、
加えて、帯電ブレードがトナーを押圧する弾性ブレードであり、トナーが所定の極性に帯電されることは明らかであるから、
これらを総合すると、引用例には、
「所定の極性に帯電させた現像ローラ上のトナーを潜像保持ドラムに現像する現像方法において、前記現像ローラと表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記現像ローラ上に前記トナーを押圧して殆ど単一層のトナー層に仕上げ前記弾性ブレードと前記現像ローラとの間で前記トナーを転がし摩擦に依り帯電させる現像方法」、
が記載されていると認められる。
3.[対比・判断]
本願発明と引用例とを比較すると、
引用例の現像ローラ、潜像保持ドラムは、各々本願発明のトナー担持体、潜像担持体に相当し、
更に、引用例の、殆ど単一層のトナー層に仕上げる旨の事項は、本願の図面第第4図に単一層のトナー層が実施例として図示されていることからも明らかなように、本願発明の、トナーを薄層化する旨の事項に相当するものであるから、
両者は、表現は相違するが、
「所定の極性に帯電させたトナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、前記トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによって前記トナー担持体上に前記トナーを押圧して薄層化し前記弾性ブレードと前記トナー担持体との間で前記トナーを転動させることにより摩擦帯電させる現像方法」の点で一致しており、以下の点で相違していると認められる。
(相違点1)
本願発明は、トナーの形状に関し「トナーを球形状とし」を構成としているのに対し
引用例には、かかる構成が記載されていない。
(相違点2)
本願発明は、摩擦帯電に関し「急速に摩擦帯電させる」を構成としているのに対し、
引用例には、かかる構成が記載されていない。
そこで、上記相違点1について検討する。
トナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法に関する技術として、
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭54―108634号公報に、球形処理をした現像剤は摩擦帯電性が良好で、未処理の場合に比して大きな電荷を得られ、弾性の現像剤層厚調整板の弾性圧力で層厚規制と共に摩擦帯電の効果も達成できる旨の事項(第5頁左上欄第16行~同頁右上欄第2行、第5頁右下欄第14行~第6頁左上欄第7行参照)が記載され、
同様に、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭55―118052号公報に、球状現像剤は流動性が良く、現像剤支持体上での摩擦帯電が良好に行なわれ、均一な電荷を持ち得る旨の事項(第4頁左下欄第15行~同頁右下欄第1行参照)が記載されており、
これらの現像剤は、各公報の記載内容からトナーとして把握されるものであるから、
トナー担持体上のトナーを潜像担持体に現像する現像方法において、流動性が良い球状体のトナーを用いることにより、トナーの摩擦帯電を良好にすることは周知技術に過ぎず、
且つ、引用例のトナーは、球形状のトナーと同様に比較的高い流動性を与えられているものであるから、引用例に上記周知技術を適用して、上記相違点1の構成を想到することに何等困難性は認められない。
次に、上記相違点2について検討する。
本願発明における「急速に」の用語は、比較する対象、具体的な速度等が特定されていないことから、どの様な事項を意味するのか不明確であるので発明の詳細な説明を参酌すると、
本願発明のトナーは球形状であって、本願明細書の実施例において「弾性ブレード41の表面粗さをトナー担持体43の表面粗さよりも粗くして、トナー42がトナー担持体43上では滑り易く弾性ブレード41上では滑り難くすることにより、トナー42は矢印45方向に転動する。従って、トナー42が圧接部を通過する時間及び摩擦帯電部材への接触機会が増大し、トナーを急速かつ安定な帯電量に帯電させることができ、」(明細書第10頁第17行~第11頁第4行参照)と記載されており、
一方、本願発明の構成は「トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレード」であって、弾性ブレードの表面粗さがトナー担持体の表面粗さよりも粗い構成を示すものではないから、
前記「急速に」の用語は、球形状のトナーを圧接するトナー担持体と弾性ブレードの表面相互を異なる粗さとすることによりトナーを転動させ、トナーが圧接部を通過する時間及び摩擦帯電部材への接触機会を増大させた構成により生じる帯電状態を表現したものとして理解される。
してみると、球形状のトナーは転動性が良好であることは自明であるから、上記相違点2は、引用例とトナーを球形状とする周知技術から想到される「トナーを球形状とし、トナー担持体と表面粗さが異なる弾性ブレードによってトナー担持体上にトナーを押圧して薄層化し弾性ブレードとトナー担持体との間でトナーを転動させることにより摩擦帯電させる」構成から、当然に想到し得る事項に過ぎない。
そして、本願発明の奏する作用効果として、上記引用例及周知技術から予測される以上のものは認められない。
4.[結論]
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例及周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論の通り審決する。